私と人形作り

 私はよく「子供が男の子だけなのにどうして人形作りをするのか。」という意味の質問をされます。

 きっかけは次男の誕生でした。はじめは待ちに待った弟が生まれ大喜びしていた長男でしたが、家庭全体が突然やってきた赤ちゃん中心の生活になり、その変化にとまどっていたのでしょう。そんなある日、「家にもカール君がいたらいいな。」といいました。カール君はシュタイナー教育の幼稚園に通う長男の保育室にある男の子のウォドルフ人形です。その頃の長男は、弟の世話をしている私をじっと見ていたり、ささいな事で急に泣き出したり、自分の気持ちの変化に対応できずにいるようでした。

 長男の心の状態を思うと、今ウォドルフ人形が必要と感じ、転勤族で頼る人のいない私は悩んだ末ベビーシッターさんまで頼み、園主催の講習会に参加し初めて人形を作りました。参加人数も多く短時間の講習で仕上げるのは大変でしたが、出来上がった人形を子供は目を輝かせて本当にうれしそうに受け取りました。一緒に遊ぶだけでなく、私が弟の世話で忙しくしているとカール君を抱っこして隣にやってきて、私の真似をしてカール君の世話をしていました。時々私の方を見てお話したりしながら嬉しそうでした。

子供の発達にとっておもちゃは大切です。どんなものを与えるかは保育するものの責任であるように思います。そのひとつとしてウォドルフ人形はすばらしい存在と実感しました。

また、時間と手と思いをかけて子供に与える人形を作ったことで、手作りの大切さを考えるようになりました。衣・食、お金を払えばなんでも手に入る時代です。人間関係も希薄になりました。私が子供の頃は、身近にいる手仕事をする大人からひとつの物が出来上がる尊さ、物の価値を自然と学び、大切にしました。又子供はそんな大人の模倣をすることで大人との関係を感じたり、大人の世界を体験したり、それを遊びの中に取り入れファンタジーの世界も広げていました。教えられたのではない毎日の経験から学んだことはとても貴重だったと今痛感しています。

学ぶだけでなく、手仕事をする大人の隣で過ごすことが大好きでした。ゆったりと穏やかな時間、暖かな思い出は、社会人となってからの悲しみや苦しみに耐える力を作ってくれていると思います。

子供の心を育んでくれるウォドルフ人形やウールドッカを、その子を愛する人の手からひとりでも多くの子供に届けられるよう、この人形たちの伝え手になりたいと強く思うようになり、次男が幼稚園に入園したのをきっかけに資格取得に向けての勉強を始め、2002年に準講師、2003年1月から講師として活動を始めました。

 お子さんと一緒でも人形作りができるよう相談をお受けしています。また作り方そのものに心を奪われないよう楽しさや穏やかな時間を感じていただきながら、お人形作りのお手伝いをしてゆきたいと思っています。
 そして私自身作る楽しみを重ね生き生きと毎日をすごす人でありたいと思っています。
                         
Shion Iwabuchi