ウォルドルフ人形・ウールドッカとは
 ウォドルフ人形はシュタイナー教育思想(ドイツ)をもとにスェーデンで生まれました。子育てには、やさしさ、愛情、情緒を大切に育んでゆくことを考えなければなりません。シュタイナーの教えは、この人形が子供たちの生活に溶け込んで、子供が抱きしめ、訴え、いっしょに遊ぶことによって子供たちと同化してゆき、心が育まれまた子供たちの豊かな想像力やファンタジーの世界をふくらませる大切な役割を持っていくというものです。

 このシュタイナー教育理論に基づく、いわゆるシュタイナー学校では、子どもたちが羊毛を詰めた素朴な布の人形であそんでいます。スウェーデンでこの人形と出会い、その作り方を日本に紹介したのが佐々木奈々子先生です。佐々奈々子先生は次のようにおっしゃっています。「夫の仕事の関係でスウェーデンに行き13年問暮らしました。最初は、スウェーデンの羊毛文化に魅せられました。羊がたくさんいる国なので、羊毛を紡いだり、編んだり、フェルトにしたりという手仕事を一般のひともたのしんでいました。それまでわたしは綿や絹の染色をしていたのですが、スウェーデンではじめて羊毛を染めるということに出会い、とても興味をもったんです。その過程で羊毛を詰めてつくる人形に出会い、かわいくて懐かしい感じがして、すぐ好きになりました。シュタイナー教育で使われている人形だということは、あとで知ったんです。」

 
当時スウェーデンでは、ウォルドルフ教育(シュタイナー教育)で育まれたこの人形についての本が出版されたところでした、偶然にも、著者のカーリン・ノイシュツさんが佐々木奈々子先生の住んでいた町に講演にいらしたとのことです。人形にすっかり魅了された佐々木奈々子先生は、ぜひ本を翻訳して日本にも紹介したい、とカーリンさんに申し出ました。そして、カーリンさんの本に登場する人形を「ウォルドルフ人形」と名づけて、人形のつくり方などを詳しく日本に紹介したのです。

 先生の人形達は、カーリンさんの人形をアレンジしてつくったものなので、『ウォルドルフ人形』でなく、『ウールドッカ(羊毛の人形)と呼んでいます。でも、素材は同じですし、人形をつくるとき子どもを思う気持ちもウォルドルフ人形の場合と変わりません。

ウォルドルフ人形・ウールドッカの特徴
 ウォドルフ人形は、肌さわりのよい生地、口に触れても安全な染料(草木染め)、羊毛など天然の材料で作ります。昔からそうしてきたように、子供は木や土や石など自然のもので遊ぶのが本来の姿です。人形を作る素材を選ぶときも、このような自然の素材を大切にします。

 中に詰める羊毛は特に弾力性のある羊の毛を選んでいます。羊毛はしっかり詰めると感触が子供の肌の弾力に近く適度の重さとぬくもりがあり、汚れて洗濯をしても元の形を保っているという利点もあります。

 ウォドルフ人形の顔は、目や口を小さくしできるだけ単純にします。これは大人の目で完成されたものにするのではなく、子供自身が想像し、ファンタジーの力で「つけたす喜び」が得られるように、又その時々の子供の気持ちを人形が受け止められるようにするためです。このように『ウォルドルフ人形』は、子どもの想像力を育てるための余地を残しています。表情をはっきりさせず、ちいさな目や口をつけることで子どもは人形に白分の感情を移入し、笑った顔にも怒った顔にも見ることができるのです。

 人形に着せる服にも天然素材のものを使います。子供の小さくなった服を作りなおして着せると、思い出とともに喜びや愛情を感じるはずです。これらの事に留意し、お母さんや保育に携わる人の手をとおして実際に形にしてゆく作業が、ウォドルフ人形作りです。この人形作りは子供のために「時間」と「手」をかけてつくることがとても大切です。時間と手と思いによって生まれた人形は子供のようにかけがえのないものとなり、子供にとって大切な存在になることでしょう。

 

ウォルドルフ人形・ウールドッカを作る
 現在、購入できるのは、ウォルドルフ人形・ウォルドルフ人形と小さな仲間たち』に著された、人形を自分でつくれるように材料がセットされた「材料キット」です。佐々木奈々子先生は、ウォルドルフ人形やウールドッカを子供達へ届けたい、手づくりのたのしさを多くのひとに知ってほしい、と思っているのです。人形に使う羊毛は、スウェーデンなどから輸入し、髪の毛用の毛糸はくるみやくちなしなどの植物を使って染色しています。

 「スウェーデンのエルサ・ベスコフの作品に『ペレのあたらしいふく』
(福音館書店/刊一という絵本があって、ペレという男の子が1枚の服をつくるために羊毛をほぐしたり、紡いだり、さまざまな手仕事をするひとに手伝ってもらうというお語です。

 日本でふつうに生活していると、自分の身のまわりのものが多くの手を経てつくられるということはわかりにくいものです。ぜひ、手仕事一つひとつのたのしさを知ってほしいと思います。人形づくりでは、羊毛にまつわる手仕事のすべてが生かせるので、さらにたのしいと思います。作り手がたのしみながらつくった人形を受けとるのは、子どもにとってもうれしいことだと思いますいます。自分のためにつくられた人形を手にした子どもの笑顔が浮かぶようです。手づくりの人形には、羊毛だけでなく愛が注がれているのですから。